株式会社清和物産

糖尿病(4)



糖尿病の慢性合併症とその対応

糖尿病の罹病期間が長くなると、必然的におこってくるのが慢性合併症で、網膜症、腎症と神経障害を三大合併症と呼んでいます(糖尿病の主な合併症)。いずれも長期にわたる血糖コントロールとの深い関係が証明されています。  

網膜症は成人の失明原因の第1位を占めています。一方、腎症の終着駅は腎不全であり、現在、慢性血液透析の2〜3割近くを糖尿病からくる腎不全が占め、今後ますます増加するとみられています。神経障害も、日常生活を困難にする大変厄介な問題を多く含んでいます。  

また、これらの三大合併症が、1人の患者にほぼ並行しておこってくることを考えると、いかに糖尿病が進行すると悲惨であるかがわかります。


【網膜症】
 目はよくカメラにたとえられますが、カメラのフィルムに当たる部分が網膜で、光を感じる視神経の末端が分布しています。網膜は酸素の需要度が高く、これに見合う無数の毛細血管が緻密に錯綜しています。  

糖尿病では毛細血管の壁を構成している壁細胞が早期から脱落し、糖尿病に特有な毛細血管瘤をつくります。そして出血や内腔の閉塞による白斑や浮腫を生じ、視力がしだいに落ちていきます。毛細血管が広範につぶれ、網膜が酸素不足におちいると、異常な新生血管が増殖してきます。

これらの新生血管が硝子体へ伸び、硝子体出血や網膜剥離をおこすと失明することもあります。また、新生血管が虹彩にも増殖し、眼圧を上げ緑内障をひきおこします。  

治療としては定期的な眼底検査を行ない、新生血管出現前にレーザー光凝固療法によって、毛細血管の閉塞や透過性亢進を示す部分を焼いて、網膜症の進行を防ぎます。

【 腎 症 】

臨床的に、腎症は蛋白尿の出現をもって診断されます。蛋白尿の出現以前にも微量アルブミンの増加を示す時期があり、とくにインスリン依存型糖尿病では、腎症進行の早期指標とされています。

蛋白が出たり出なかったりの間欠的蛋白尿期を経て、持続的蛋白尿期へ進みます。その後は、しだいにBUN(尿素窒素)やクレアチニンなどが上昇し始め、腎不全期へ至ります。

この時期には乏尿や浮腫、貧血や高血圧などをともない、結局、維持透析が必要になってきます。  腎症の進行予防には血糖コントロールの改善と、過激な運動をさけ、塩分制限と高血圧の管理や尿路感染の予防などに努めることが大切です。

また最近では、比較的早期から蛋白摂取量の軽度制限(体重1キログラム当たり0.8グラムまで)が有効であるとの成績もあります。

【神経障害】

両足の先端からしびれやじんじん感などの感覚異常が出現し、靴下−−手袋型の分布を示します。夜間に増強し、日中、運動中には軽快するのが特徴的です。腱反射も比較的早期から消失します。  

また、電気が走るような神経痛、足の冷えやほてりなどもよくみられます。ときには特定の単一神経や脳神経(とくに眼球運動を支配する神経)の麻痺により、運動障害や複視が突発することもあります。  

さらに発汗異常、起立性低血圧、がんこな下痢や便秘、無緊張性膀胱やインポテンスなど、自律神経障害も出現します。また痛覚鈍麻による熱傷や外傷により、壊疽を生じることも少なくありません。

治療としては血糖コントロールの改善に加え、向神経ビタミン(ビタミンB群)や抗うつ薬など対症的な治療が主体となります。


高齢者の糖尿病

60歳をすぎて発見された糖尿病では多くの場合、食事療法により肥満を是正するだけでコントロールがうまくいくことがあります。経口血糖降下薬やインスリンを使用し、血糖を厳格にコントロールしようとすると、意欲低下やぼけを促進する可能性もあります。

また、低血糖は高齢者ほど重篤な影響を残します。  一方、体重減少が著明で、筋肉の萎縮が目立つ例では、少量のインスリンを使うことにより、筋力を維持することができることもあります。




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