株式会社清和物産

くじらの世界では老を敬い、幼きを守る

昭和57年の春、ちょうど桜が満開の時期に突然、鳥羽湾に一頭の大きなクジラが潮を吹きながら浮上してきた。その第一報を聞いたときには、市民や大勢の観光客も、海岸近くを悠々と泳ぐ巨体にしばし呆然としていた。

 新聞社やテレビ局から電話があり、「一体このクジラは何をしにきたのか」と質問が入った。「それは私に聞いてもらっても分からない。本当のことはクジラに聞いて下さい。というより答えようがなかったが、「たぶん陽気が良いので花見にでも来たのだろう。と冗談を言ったら、ある新聞の見出しに、「花見クジラ、鳥羽湾に現れる。」というのまであり驚いた。
 
 このクジラは、シロナガスに次いで大きい大型のコククジラで、体長12・3メートルもあった。そして伊勢湾で2ヶ月?保養の後、突然を消した。
 新聞社は一頭で来ると「迷いクジラ」ではないかという見方をするケースが多いが、それは誤解で、広い海原を行動するとき、クジラは親子や群同士が超短波をもっていて会話があり、連絡をとりあっているから迷うことはあり得ないのである。

 コククジラの故郷は、北のベーリング海で、毎年200〜300頭の群れがアラスカからカナダの沿岸を通り、北米大陸を南下してカリフォルニア湾にやってくる。ここで子育てをして、また北へ帰るのだ。
 往復する距離は15000キロに及び、壮大な海のロマンの旅である。渡り鳥と同じように毎年往復しているが、驚くべきことは、1つの群れの郡に4つの集団が組み込まれていることである。

 先頭集団は若者で、群れの仲間がシャチなどに攻撃されないように見張り役をしている。第2グループは老人クラブとも呼ぶべきおじいちゃん、おばあちゃんの年老いたクジラである。3番目はその春カリフォルニアで生れたばかりの赤ちゃんグループ、最後尾にはその父親、母親がついている。
 この秩序ある隊形は、ヤングは年長者を尊敬して守り、未成年の子供らは親たちが完全に保護していることを物語っている。

 人間界の青少年保護や老人福などよりもずっと進んでいるのではないだろうか。クジラの世界では、老を敬い、幼を守る原則が守りつづけられているのである。

◇◇ その他の項目 ◇ ◇
イセエビは長寿のシンボル ミズスマシの目は生物イチ
ツルは千年、カメは万年 渡り鳥のエネルギー効率はコンピュータ並の正確さ
バランスのよい食事と睡眠が百獣の王の秘訣 くじらの世界では老を敬い、幼きを守る
豊かな食性やストレスをためない泳ぎ方が長寿の秘訣 虫も食わぬ汚染米
少量なら酒は『百薬の長』 ホタルの光はダテではない
魚たちは夏バテ知らず 人間も動物も睡眠・運動・休養・食事そしてストレス解消が健康の秘訣