渡り鳥のエネルギーには感心させられる。 オオミズナギドリはオーストラリアのタスマニア島に棲んでいるが、毎年4月に飛び立って、5月に日本にやってくる。紀伊半島の熊野灘あたりに飛来するが、この鳥は途中であまりエサを食べない渡り鳥である。 渡り鳥は備蓄した脂肪をエネルギーとして海を渡ることで知られる。 鳥の生態研究をしている学者が、オオミズナギドリの足に認識番号をつけて調べたところ、渡りの前とフラフラになって到着した時点で比較してみると、全重量が28%減っていたのである。つまりこの分が、「燃料」として消耗した体内脂肪だといわれる。 ところでジャンボジェット機の積む燃料の分量は、どの航空会社でもだいたい決まっていて、人間も貨物も乗せたジャンボ機の総重量の28%である。積みすぎるとスピードも遅くなるし、目的地に着いたときにたくさん残っているようでは無駄である。 反対に積み足りないと、海の上でギブアップなんてことになってしまう。そこでもっともエネルギー効率のいい比率としてコンピューターが弾き出したのがこの数字なのだが、なんとオオミズナギドリと同じ比率である。 オオミズナギドリは旅立つ前に十分なエサをとって、28%の体脂肪を蓄える。その脂肪をエネルギーにして大海原を渡っていくのである。 同じくツバメも3500キロの長旅をするが、体が小さすぎて28%もの脂肪を備蓄することができない。しかも高速飛行をするからエネルギーの消耗が激しい。 そこで飛びながら空中で虫を捕まえ、エネルギーを補う技術を身に付けた。軍用機の空中給油と同じ理屈である。一方、キョクアジサシは南極から北極まで18000キロを無着陸で飛行する、飛距離世界一の渡り鳥だが、気流に乗って渡るのでエネルギーの消費が少ない。だから途中で補給する必要がない。 いずれにせよ渡りをするためには、最低必要量のエネルギーが要ることに変わりなく、それ相応のエネルギーの備蓄が必要なのだ。食物で栄養をつけ、休養を十分にし、体調を整え、体力を増進しておくことの重要さを、渡り鳥は教えてくれるのである。 |