昆虫類は、地球上の生物の中では実に130万種類を超え、他の生物群を圧倒的にリードしている。その昆虫の大半は野や山、とりわけ森林に棲んでいる。よくしたもので、人間をはじめ動物たちは酸素を吸って炭酸ガスを吐き出し、逆に植物は炭酸ガスを吸って酸素を放出してくれる。ここに動物と植物の平和共存の原則がある。 昆虫は森をすみかとする。そして昆虫を食べるために野鳥が群がり、そして他の大型動物も森をすみかとしている。 ではなぜ昆虫は森に多く集まるのだろうか。それは彼らの食性が木の葉や樹液を吸うことであったり、体色が外的から身を守るための保護色で、周囲の環境とマッチした色彩であったり、また、卵を産みつけて子孫を残すための重要な場所であるからだろう。 だがもう一つの大きな理由としては、森には、彼らの「森の酒場」があるからではないか。日本最大の昆虫で知られるカブトムシは、夜行性で木の汁を吸って生活している。 だからカブト虫を捕る時は、酒を入れて煮た黒砂糖水でおびき寄せることが可能だ。また木の皮にスイカの皮や蜂蜜を塗っておけば、その匂いに寄ってくることはよく知られている。カブトムシと並んで子供たちに人気のあるクワガタムシも、ナラやクヌギの雑木林の木の甘い汁を吸っているから同様である。 700種類もいるカミキリムシは、強いアゴと口で木にトンネルをあけて棲むので、テッポウムシともいわれるが、やはり樹液を吸っていることには変わりない。 昆虫の中にはフェロモンという液を出して、仲間同士の存在を確かめたり、オスとメスの愛情交換にも使ったりしている。それだけに匂いに対しては、昆虫は特に敏感で誘惑されることになる。「酒場」といっても、樹木の種類や、新芽の出てくる時、枯れる時では違ってくる。 左党が夏場に冷たいビール、真冬に熱カンで酒を飲むように、昆虫たちも結構「森の酒場」で、季節の飲み物を楽しんでいるようだ。 深酒は体に良くないが、少量なら「百薬の長」と昔からいわれる。それぞれが然るべく休息を楽しんでいるのだ。 |