生後七日目、赤ちゃんの腸のなかには、ほぼ生涯を共にする菌種が勢ぞろいする。この誕生から七日間の腸内細菌の変化は、ヌカミソ漬けを作る時、まず雑菌が増え、間もなく乳酸菌が増え、雑菌を抑えてしまうのに似ている。
雑菌がそのまま増えつづければ、ヌカミソは腐ってしまう。しかし、乳酸菌の登場で雑菌は抑えられ、ヌカミソ漬けは乳酸醗酵のためにおいしくなっていく。腸のなかが腐らないのも、これと似た細菌の力関係が働くからだ。
ビフィズス菌は、乳児期には腸のなかで圧倒的な優勢を占めるが、離乳期になるとその数は減り、一般には一生を通じて減っていき、老人のなかには、まったく姿を消してしまう人さえいる。これに比べ、すきあらば増えようとする悪玉菌の代表、ウェルシュ菌は、年をとればとるほど優勢を保ってくる。腸内で、一見、安定を保ちながらも、無敵の細菌たちがうごめきながらしれつな勢力争いを展開しているのだ。
腸内に生息する細菌たちの種類はざっと100種類、その数は100兆個、細菌一個の大きさを仮に直径1ミクロン(1000分の1ミリ)として一列に並べたとすると、なんと10万キロ、地球を2周以上するという膨大な距離になってしまう。
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