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痴呆とは何か・どんなときにおきるか




 痴呆とは、人の知能がひとたび発達をとげた後になんらかの原因で障害され、記憶障害をはじめとして脳のはたらきがさまざまな面で障害され、そのために正常の対人関係、社会生活ができなくなった状態をいいます。
 人の記憶力は、20歳代から低下しはじめ、40歳をすぎると人やものの名前が思い出せない、いわゆる「ど忘れ」が多くなりますが、これは異常ではありません。
 
   記憶障害を心配して大学病院の専門外来を訪れる人の多くは、症候のない健常者ですからご安心ください。痴呆は脳全体のはたらきがうまくいかなくなったときにおこりますが、ときには限られた部位が障害されただけで、痴呆になることもあります。
 
  痴呆の中核症状は知的機能の低下、すなわち「痴呆そのもの」といった症候で、記憶、計算、判断などが障害され、そのために食事をしたことを忘れる、外出すると帰宅できない、などのような問題がおこります。現在のところ、記憶など重要な中核症候に有効な薬はまだありません。
 

  痴呆の周辺症状とはこのような知的機能低下があるためにおこるいろいろな精神症候、たとえば興奮、不安、抑うつ、妄想、不眠などや、いろいろな問題行動、たとえば暴力行為、夜間の徘徊、窃盗、不潔行為(便をもてあそぶ)などです。周辺症状に対しては、抗精神病薬、脳代謝賦活薬、催眠薬など有効な手段があります。
 
  痴呆をおこす病気には、治らないものが多いのですが、なかには治療ができる病気もありますので、一度は精密検査を受ける必要があります。



老人の痴呆の代表的なもの


@脳血管性痴呆(のうけっかんせいちほう)
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  脳血管障害によっておこる痴呆です。その代表的なものは多発梗塞性痴呆といい、小さな脳梗塞がたくさんおこって痴呆になるものです。
これはむかしは脳動脈硬化性痴呆といわれたものに相当します。

  脳血管性痴呆のその他の原因としては、大きな梗塞によるもの、脳出血によるものがあります。
このほかにもビンスワンゲル病といって、おそらく血圧の低下しすぎなどのために、脳の白質に脱髄(神経細胞や、その突起をとりまいているグリア細胞が障害されること)という病変がおこるものもあります。
 
  また、脳の血管にアミロイドという物質がたまるアミロイド・アンギオパチーという病気もあります。エタ・クリブレというのは脳のなかに小さな穴がたくさんあき、脳の断面をみるとちょうど蜂の巣のようにみえる状態で、血管の周囲の腔が血流不足のために拡大するためとされています。
 
  これらの疾患はすべて痴呆をおこし、脳血管性痴呆に含まれます。

(症候)
 痴呆をおこすことについては、これ以外の痴呆性疾患と同じです。経過は脳梗塞や脳出血の発作にともなって急に痴呆になるものと、いつとはなしに徐々に痴呆になるものがあります。しかし、徐々にといってもアルツハイマー病とは異なり、ある時点でとくに悪化したり(段階的な悪化)、ときに逆によくなったり(動揺性経過)することがあります。
 初期のうちは病識があり、自分でおかしいと思い、なんとかそれを補おうと努力してメモをとったり、また質問に対していい逃れをしたりします。

(検査)
 頭部CT(コンピュータ断層撮影)、MRI(磁気共鳴映像法)検査を行ないます。小さな梗塞が多発している場合は、MRIがとくに役立ちます。脳波、脳血流の測定など脳のはたらきについての検査も重要です。

(治療)
 脳循環改善薬を使います。また、いろいろな精神症候、異常行動に対しては対症療法を行ないます。脳血管障害をおこしやすい病気、たとえば高血圧、糖尿病、高脂血症などが合併していれば、それに対する治療をすることにより、その後の悪化がある程度防げます。とくに血圧の下げすぎには注意が必要で、夜間血圧が下がりすぎたりするとよくありません。「痴呆は夜つくられる」といわれています。

(予後)
 長い間状態が変わらなかったり、脳血管障害の発作をくり返して痴呆がわるくなったり、また、少しよくなることもあり、患者によってさまざまです。

◎生活上の注意
 きちんと通院し、医師の指示を守ることが必要です。



Aアルツハイマー病(びょう)
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 初老期あるいはお年寄りにおこり、脳がだんだんやせていき、痴呆がおこり悪化する原因不明の病気です。日本では痴呆をおこす病気としては2番目に多い病気です。

(症候)
 痴呆はいつとはなしにおこり、数年間かかって徐々に進行します。急に悪化したり、改善したりすることはありません。比較的早期から人格の崩壊がみられ、「知らない、わからない」などと平気で答えるようになります。

(検査・診断)
 CT(コンピュータ断層撮影)、MRI(磁気共鳴映像法)検査で脳の萎縮があることを確認し、脳血管性痴呆や脳腫瘍など、痴呆をおこすほかの原因がないことを確かめます。脳波検査は脳のはたらきをみるのに有用であり、知能検査(神経心理学的検査)を行なえば、痴呆の程度がさらにくわしくわかります。最近の検査では、脳の頭頂葉という場所がとくに機能がわるく、血流も少ないことがわかってきました。

(治療・予後)
 病気の経過を変えられるような治療法はなく、数年でいわゆる恍惚の人という状態になります。しかし、精神症状や問題行動に対しては薬剤があります。

◎生活上の注意
 痴呆であるということをよく認識することが必要です。正常の人だと思って接すると、不愉快にさせられることばかりでしょう。よほど人手がないかぎり、やがては自宅療養は無理になりますので、早めに施設などの申し込みをしておくとよいでしょう。


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